サンジェルマン通りには、哲学者サルトルと文学者ボーヴォワールに縁のある喫茶店が二つあります。
一つは、この写真のカフェ・ド・フロール/Cafe de Flore。
サルトルとそれから彼と「契約結婚」をしていたボーヴォワール。この二人や彼ら友人達がいつも熱い討論を交わしていた場所。
名前が「花」というだけあって、お店に溢れる植物がフロールの特徴になっています。
もう一つは、その隣のカフェ・ドゥ・マゴ/Cafe Deux Magots。
カフェの上はアパートになっていて、そこの5階にサルトルは暮らしていたそうです。
Deux Magotsは二体の中国人形の意味。
私のアパートにほど近かったので、この2つのカフェの前は何度も行き来しましたが、
結局一度も入ることはなかったなあ。。(いつも人が途絶えることはなかったし、、)
けれど、横目で見ているだけで、彼らがそこにいた時代、パリがそしてパリのカフェが最も輝いていた時代を想像するだけでなんとなくときめきを覚えました。
どこに住んでいても、実際のパートナーは替わっても、いつも作品が出来た時一番に見せるのはお互いだったというこの二人の特別な関係に若い日ほのかに憧れたこともあります。
彼らの「契約結婚」は結局50年続いたのだそうです。
「やがて、シモーヌ・ド・ボーヴォワールと私は、そこを住処にしてしまった。午前九時から正午まではそこで仕事をし、昼食をとりに出かけてから、また二時に戻ってきて、四時までそこに出会う友人たちとおしゃべりをした。そして、八時までまた仕事をするのだった。夕食後は、そこで待ち合わせをした人々を迎えるのだ。奇妙に思えるかもしれないが、私たちにはフロールが我が家だった。」
サルトル「カフェ・ド・フロールの黄金時代」より
・・・こんな風に居座る連中を容認したフロールの方もなかなか太っ腹だ。
一体何杯のコーヒーを飲んだのか・・
今度パリに行く時には、やっぱりフロールの席にちゃんと腰をおろしてみようかな。。