2008.09.14 Sunday 21:29
夏のフィンランドでさえ、あんなに涼しかったのだから、冬の寒さはいかばかりか、と滞在中ずっと気になっていた。
寒いだけではない。太陽がほとんど顔を見せない半年があるなんて、四季に恵まれたこの国に住んでいるとうまく想像することもできない。
勿論、フィン人にとっての冬はずっとそういう厳しいモノなのだから、私たちよりもずっと耐え忍ぶ力は強いのだろうけど、それでも、この冬の暗さと寒さに耐えきれず精神を病む人も少なくないと聞く。うつ病になる人が多いのだそうだ。
この写真を撮影した日は冷たい雨が降る一日だった。
この日はもうすぐ(フィンランドにいると夏でも冬が「もうすぐ」なように感じられるのだ)待ち受けている冬のことばかり考えていた。
こうして風景がグレーになると、心の中まで同化してしまうのかもしれない。人間は環境の動物だから。
ムーミンの中に「モラン」という登場人物がいる。(人物と云っていいのか・・・)
大きな毛布お化けみたいなモラン。
「不毛で心を凍らせる孤独の象徴なのか。暖まろうとして近づくと火が消えてしまうのがモランの不幸である。だれからも愛されず、だれも愛さないという意味で怖ろしいというよりも哀れな存在。」<冨原眞弓訳>
モランはみんなが嫌いな冬の権化のように描かれている。
長くて灯りも窓もないトンネルみたいな冬。
モランみたいな冬。
フィンランドの冬。