2012.08.31 Friday 14:13
ブラッドベリー・ビル/Bradbury Buiding。
外はロマネスク風のレンガ貼りのこれといった派手さはないビル。
しかし、中に入ると、ビルの中に古い街がすっぽり入っているような不思議な空間が待ち構えている。
天窓が明るく照らす細長いロビーの周りに、鉄階段と籠式エレベーターが躍動感を加えている。
ダイナミックさと、繊細さが同居する魅力的な構成と、素材の組み合わせの上手さに魅せられる。ジョージ・ウェイマン1893年の作品。
ソーク生物学研究所は、ポリオ・ワクチンの開発で有名な細菌学者のジョナス・ソーク博士がリチャーズ医学研究棟を見て感銘を受け、「芸術家のピカソを招いてもいいような研究所を」という彼の肝いりで依頼されたものである。
リチャーズでは縦に割れていた「サーブド・スペース」と「サーバント・スペース」の関係性が、ここでは設備的には上下2層に分かれ、さらには共同作業を行う実験室と明確に分けられる形で、居住性に配慮した個人研究用の個室を、中庭に面して左右対称に、45度の角度で重なり合いながら横に張り出させている。そしてその外観を、明るい砂色のコンクリートに良くマッチした窓枠のチーク材の生成りの色合いとのツートーンで際立たせつつ、印象的なファサードを形作ることに成功した。
この印象的な中庭は、そのデザイン処理に最後まで悩んだカーンが、友人の建築家ルイス・バラガンにアドバイスを求めたことによって実現したものである。相談を受け現地に立ったバラガンは即座に「ここには何も置くべきではない。ただのプラザになるべきだ。そうすればここは空へのファサードになるだろう」と言い、カーンもまたすぐにそのデザイン意図を理解したという。カリフォルニアの明るい太陽の下、中庭の真ん中に穿たれた浅く細い水路の先に、広大な太平洋を望むランドスケープは、カーン建築のなかの嚆矢である。