2014.09.30 Tuesday 18:45
見て見て!
玄関のモッコウバラのツルが、もうあと数センチで3階の屋根に到達・・・
すごい!!!根性ある!!!!!
月には、さつきさんという付き人がいて、ふたりはみつき前から恋人同士の関係になった。付き合うことを決めたのは、ふたりの波長がとても合うからだった。目的なく散歩するのが好きな月は、いつも空をほっつき歩いていたが、さつきさんは、文句も言わずに付き添ってくれた。もうひとつの理由は、さつきさんの苗字が伊築さんだったからだ。さつきさんの名前を漢字で書くと、伊築沙月なんだけど、月はその文字の並びと響きがとても好きになった。さつきさんの家族の名前も、月は大変気に入ってしまった。お父さんは萬月、お母さんは葉月、お兄さんは香月、お姉さんは菜月、妹はみづき。こんなにも僕としっくりくる家族が他にあるわけが無い、と思ったのだった。
月とさつきさんの家は、星影通りのつきあたりにあった。ふたりは家に帰る途中、星影通りのベンチに座って、尽きない夢を語り合った。
ただ、ひとつ、さつきさんにはギモンがあった。月が夕暮れになると必ず何処かへ出掛けてゆくのだ。そして朝まで帰って来ないのだ。無駄な詮索をしないところが、さつきさんのいいところだったが、今日のさつきさんは違った。今日こそ月が何処へ行くのか、突き止めてやるの、と言った。付かず離れずの距離を保って月の後をついて行った。
その事を月は知っていた。さつきさんのことは大好きだけど、詮索しないさつきさんで居て欲しかったな、と月は少し残念だった。当然の事ながら、月は夜に働いていた。みんなを照らす仕事。アルバイトなどとは訳が違う。自分の一生をかけた歴とした仕事なのだ。でも、さつきさんにはそれが分からなかった。たまには休んでわたしのそばにいて欲しいわ、と言ってきかなかった。いくら説明しても納得しない。月は困ってしまった。そして、さつきさんに対する愛情も少しずつ薄れてしまったのだ。ふたりの愛の鍍金が剥がれていく。月は、とうとう別れをきりだした。さつきさんはその時はっきりと分かった。月を独り占めするなんて不可能だったと。そして、月に別れを告げて去った。めっきり寒くなった冬の夕暮れだった。ふたりが幸せだった日々は、ほんの十月ほどの事だった。でも、今でも月はさつきさんのことを、夜の間じゅう優しく照らし続けているんだ、とさ。
by イシペンギン
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